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Morita Therapy and Me森田療法と私

森田療法と私

不安や緊張、他人のあり方など悩みにとらわれ悪循環に陥っていませんか?日本を代表する神経症治療の森田療法は不安の裏側にある「健康な欲望」に光をあてる療法です。Q&Aでわかりやすく説明していきます。

森田療法とは

森田療法とは、どんなものなのですか?

森田療法とは、森田正馬という精神科医(1874~1938)が創始した神経症治療のための精神療法で、入院治療、外来治療(カウンセリング)、日記療法などがあります。
現在では、海外の精神科医や臨床心理家にも注目されていて例年国際学会が開催され、また国内では精神科医だけでなく心理士にも広く普及されています。

神経症というとなにか精神的な病気なのかと不安になりますが

そんなことはないんですよ。悩みや不安にとらわれすぎて、かえって悪循環になってしまうことってあるじゃないですか、そんな悪循環の打破を目的とする行動療法なのです。神経症には、不安神経症、強迫神経症などがありますが、誰にでも気になりだすとキリがないとかいう部分があるでしょう。私もすぐハマっちゃう傾向が多々あるんですけど、簡単にいうと「気にし屋さん」「心配性」「確認グセ」「潔癖症」などの症状というか傾向のことです。その背景には完全主義的な部分が多分にあって、そのまた背景には不安がある、でも、その不安は欲求の裏返しだよというのが森田理論なんです。

気にすればするほど余計に気になるメカニズム

たとえば、緊張症・あがり症の人が緊張してはいけない、いけないと思えば思うほど余計にあがって失敗しちゃう、というような悪循環とか、試験勉強のため集中しようとするが自分の集中力の無さが気になって、実際の勉強に取り組むより集中力をつける本ばかり読んじゃったりして、そんな時間があるなら勉強しろ!って話だったり(笑)することありませんか?

あります、あります!

ですよね。そんなふうに、不安とか心配とか悩みとかを消そうとする態度のことを森田では「消去姿勢」というんですけど、それにとらわれてあれこれ、はからいをするわけです。でも、そうすればするほど悪循環に陥る。毎日、気になることを消すことができているかということばかり測るような生き方になっちゃう。
この「とらわれ」「はからい」「悪循環」はまさに森田療法の主要な用語なんですけどね。

なるほど・・・

森田療法では、そんなふうに自分が何に注意を向けているかに注目します。
そして、それほど気になるのは、たとえばそれほど失敗するのが気になるのは、うまくやりたいという欲求が強いがゆえ、その裏側の「失敗するのでは」にばかりとらわれちゃっているからなんだねぇ、と気づかせ、そうした不安を打ち消そうと消去姿勢になるかわりに「何すればよいわけ?」と実際の行動へ向けていくという療法なんです。

おもしろい! 私なども、いつも人から嫌われるんじゃないかって、心配ばかりしています。

不安は=欲求の裏返し
欲求とは=自然なもの

人から嫌われないか、どう思われているか気になりますよね。それは、人から好かれたいって思っている証拠なのです。人によく思われたいというのはとっても健康な欲求じゃありませんか?

うーん…そうなんでしょうか、人目ばかり気にしているような気がしますが

そこなんです。
「好かれたい」とか「人と関わりたい」と思う欲求の裏側の「だから嫌われたくない」という部分が大きくなりすぎると、人目が気になり絶対に好かれるように振る舞うべきという「べき」が出てきちゃう。その「べき」に今度はものすごく縛られてしまう。すると、どう振舞っていいかわからない、というふうになってしまう。極端な話、だったらもう人と関わらない、というふうにゼロか100かで考えて生活が縮小していくことになったりするわけです。

「不安を欲求に読みかえる」ということは森田療法の真髄なのですが「あるがまま」というのも森田のキーワードなです。あるがままの「これくらいの自分」という等身大の自然な自分に対して「かくあるべき」が強すぎちゃうとしたら、それは、理想が高すぎるということになりますよね。その理想なんだか不自然なんじゃない?って。そこまでしなければならないと思っていれば、辛いよねぇ、という部分。

人前で話すときは誰でも緊張するほうがむしろ自然なのに、そうあってはならない、どんなときも堂々としているべき、の「べき」が強すぎるのって、逆に不自然じゃありませんか。

わかります、わかります。完璧主義っていうか

そう、そう、完璧主義傾向にある人はたいてい森田療法的なアプローチは有効です。うつ病になりやすい人も病前性格といって、もともと完璧主義傾向で無理がきく人がすごく多いです。能力が高いということでもあるのですが、そこを改善しないから「うつ病は再発しやすい」といわれているくらいなんです。
おおまかにいうと、そうした自分自身への縛りをゆるめて、ごく自然な気分や変えられないことを捻じ曲げようとする方向へ心や行動のエネルギーを向けるかわりに「それよりどうなりたいの」というところを無理せずできるところから、できるぶんだけ取り組んでいこうよ、というのが森田療法なのです。

森田療法との出逢い

リズさんは、森田療法とはどのように出会ったんですか?やはり、ご自身が悩まれたときに受けられたセラピーだったんですか?

それが、そうではないんです。これもご縁というか、必然的な出会いというか…あるとき、ええとあれは2004年だったかしら「森田療法セミナー」からなぜか案内書が届いたんですよ。それで、なにげなくはじめの1年コースを受けてみたら「なんだ、これ私してきているじゃん!」ってすごくエキサイトしたんです(笑)。しっくりきた。だってサラージ・メソッドでしてきていた「学」と「実」の部分だったから。それで自分自身のためにもなりましたから、おもしろくておもしろくて、あれよという間に気づいたら4年目のスーパーアドバンス・コースまで終了していたんです。私っていつもそんな感じなんですよね…。

チャネラーになられてからヒプノ・セラピーに出会ったときも、そんな感じだったのでは?

そうなんです。なんだか実践ありきで、お恥ずかしいのですが、ヒプノのときも不思議なご縁で米国のリンダ・ローズ博士のヒプノ・ポテンシャルのコースを当時チャネリングでお世話になった会社からプレゼントしていただき、受けてみたら「あ、私がやってたことって催眠療法だったのか」って。(笑)でもヒプノって私の印象では本人の意志とか、サラージ・メソッドで重視している本人の段階(スタンディング・ポイント)をちょっと無視して進めちゃうところがあるように思えて、私は、そうはしていないぞと、ヒプノを習っていたときからそれは思っていました。つまり催眠療法がすごく効果的だったという人がいる一方、やってみたけど変わらなかったという人がいるのは、セラピストがよかれと思って一方的に進めてしまったりして、本人の矛盾を取り上げないので人によっては効果がないということになるんです。

それなので、ご本人の理解度や自己受容度、感情受容や特定の人や出来事に対するとらえ方などについてこちらもよく確認して見極めながらスタンディング・ポイントに合わせて「学・実・癒」を行なっていくということが、どうしても大切だというのが私の考えです。
話がそれてしまってすみません。

いいえ、よくわかってきました。

サラージ・メソッドでの森田療法の位置付け

ということは、リズさんは、森田療法の専門家と考えてよいのですか?それともそうではないのですか?

なんだか難しい質問になってきましたね…(笑)答えはYes and Noです。森田療法だけで見事に変わることはあります。そのとき私がしたことが森田的アプローチのみだった場合には、結果的にYesになります。けれども私はいずれのセッションでも最初と最後にリラクゼーションや願望成就のイメージ法などを行うので、もともとイメージ療法を併用している形になるわけで、そうすると純粋な森田療法家とは、いえないのでNoなのです。森田的な心理教育と行動の実践だけでは、どうも行き詰まる場合が少なくないんですよ。

「でも」が出てくるから?

その通り! 頭ではわかっていても、怖くて出来ない、ということがどうしても出てきちゃう。怖いというのは、課題行動をしにくくさせますから、そういう場合には、感情受容のために心理セラピーをすることで行動を促進することができるんです。実は、森田療法の理論というのは、そうした過去へのとらわれなどに対しては「不問にふす」といって取り上げないことが特徴でもあるんです。つまり森田では、怖いのはわかる、でも、その怖さを抱きかかえて、そのあるがままに行動をしてごらんと。それは恐怖突入的な経験でもあるのだけど、その経験を通してこそ、これまで気になってしかたがなかった「気分(感情)」を受容できるようになるのだからという理論なんです。
ですから森田療法的な考えからすると、トラウマ・セラピーをすること自体、理論に拮抗しているんです。だから森田の学会では、私は「おかしなことをしている」(笑)。けれども、「でも」が出てきても、その理論だけでやっていくと、生徒さん(クライアントさん)は、すごく抵抗してきますし、押し問答の説得療法みたいになってしまい、時間ばかりかかってしまいます。できにくくて困っているのにいいからやれとは、現代人には通用しないところもあります。ですから私は、そうした「でも」が出てくることは”想定内”として感情受容・自己受容のセラピーも行っているんです。もともと傷つきやすい人が悩んでいるわけですし、そういう人は感情を溜め込んでいることがほとんどですし、そのぶん受容の力も高いとはいえないわけです。なにしろそんなふうに森田療法を取り入れているというスタイルです。2つ以上の療法を組み合わせて行うことを臨床心理では、折衷主義というのですが。

森田療法のキーワード

ありがとうございました。森田療法、オモシロイですね。森田療法には、ずいぶん色々な用語があるみたいですけど、最後に、ほかに何かためになるキーワードがあったら教えて下さい。

ええ、もちろん。まず、さきほどの「気にすればするほど余計に気になる」というのは「精神交互作用」といいます。それから気分にとらわれてつい手をつけちゃう(はからう)わけですが、気分というのは「放っておけば自然と戻る」というのを「感情の曲線」と言います。動悸が気になるとかいう場合も消そうとするより放っておけば鎮まるものを「このまま死ぬのでは」などと恐怖にとらわれるので、はからってしまい悪循環になるとか。職場で上司から注意されたというときはしばらくドキドキしたり気持ちを引きずったりするわけですけど、それは自然なんだし放っておけば戻るものだよ、というのが「感情の曲線」です。あとは「六割主義」これは多くの「べき」で生きている人は、いつも100点とらなくてはと思いすぎ。ときには120点目指してる。ぜったいとるべきって。だから何をするにもする前から怖くなって、結局しないというゼロか100かというあり方でいることが多くなってしまい本末転倒。そこで「六割主義でいきましょう」というふうに奨励します。こんなところでしょうか。

森田療法は、恋愛に効く

いや~、森田療法ってオモシロイんですね。

オモシロイでしょ~
恋愛なんかでも、やっぱり好きだからすごく気になる、それは自然なことなんです。ですけど、たとえば彼氏と連絡が取れないときの「不安」をもちこたえられないので、何度も電話やメールをしてしまい、うざい、なんて言われて、落ち込んだり余計に不安になったりする。その不安を打ち消そうとするから、次に会ったとき楽しい話題で楽しそうにしていればいいものを「私のことどう思っているの」なんて確かめようとばかりするから彼は不機嫌になったり逆ギレしたりと悪循環…。

全然フツーにありそう~!

でしょう? だから私は「恋愛Morita」とか命名して恋愛に特化した森田療法やってみたいと思っているんです。実際に2012年の学会では、恋愛での不安に悩む女性のケースを発表したくらいなのです。テーマも変わっていてやっていることも他の療法との併用なので変わっているため、恐る恐るの発表だったのですが、学会の先生方からもご興味もっていただくことができ、なかなかよい手応えを感じました。

オモシロイです! 今後のリズさんの森田療法的な活動、サラージとのコラボに期待します。

わあ、嬉しいです。ありがとうございました!