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Therapyトラウマセラピー・心理セラピー

トラウマ・セラピー心理セラピー

過去の心の傷を癒す「トラウマ・セラピー」感情を解放する「リリーシング」自己受容のための「インナー・チャイルド」など主要セラピーについてQ&Aでお答えしていきます。

主な心理セラピーについて

「サラージ・メソッドとは」での説明で「学・実・癒 三位一体」ということはわかりました。そこで、このコーナーでは「癒」に位置する心理セラピーについて伺っていきたいと思います。

まず心理セラピーとは、どのようなものですか?

心理療法、心理セラピー、カウンセリングなどは、同義語とされている場合もありますが、私は、カウンセリングと心理セラピーとは少し分けて考えていてカウンセリングは、目を開けて「お話するスタイル」で心理セラピーは、眼を閉じリラックスした状態でストレスや日頃の我慢を解放したり、内観した状態で心の部分を掘り下げて自己対話したり、トラウマなど感情的な部分を癒したりするものというふうに区別しています。
私の行うメソッドは、心の癒しだけが目的という人のためにだけ行われるものではないので、ある人にとっては、プライベート・コンサルティングのなかの一部に心理セラピーの時間があるという形になります。

ベーシック・セラピー「リリーシング」について

ベーシック・セラピーとされている「リリーシング」と「インナー・チャイルド」について説明してください。

はい。
まず「リリーシング」とは、その名の通り「解放」です。簡単にいえばストレスでもこれまでの我慢でも、何でも心のなかに溜まっていたものを解放するセラピーです。
すべてのセラピーがそうですが、まず心身をリラックス状態へと私のナレーションで誘導します。音楽やオルゴールも流したりします。そして心に溜め込んできた感情、抑えこんできた感情をただ解放するのです。

そうすると、みなさんどうなるのですか?

みなさん、それぞれ心のなかに出てくるイメージは様々なので千差万別ですが、多くの方が自然と涙を流されます。
私は、涙というのは、最高の癒しだと思います。なぜなら気分をハイにするお薬も気持ちを鎮めるお薬もあるけれど、涙を出してくれるお薬ってないじゃないですか。だから涙って最上級の自然治癒力だと思っているんですよ。
毎日よく頑張ってくれている自分に「ありがとう」「もう我慢しなくていいよ」そんなふうにしっかり心に伝えると、色々な感情と一緒に涙が出てくるんですね。
叫び声で号泣される方も全然普通にいらっしゃいますし、床に寝転んで行う場合などは、なぜか自然に身体が動き出して身体をしきりに動かしたりする方もいらっしゃいます。
それからリリーシングでも怒りの解放とか罪悪感を解放など、特定の感情などにフォーカスすることもあります。

「リリーシング」は、まずは、誰にでもストレスや溜め込んだ感情を解放して心身すっきりが目的ということですね。

はい、その通りです。
心理セラピーというと何か心の闇の部分を無理やり引き出されるとか、難しいことや怪しいことをさせられるという先入観をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくそうではないんです。ほんとうに気持ちがいいんです。すっきり心身のエネルギーが流れるようになりますし、自分は、こういうことをこんなふうに溜め込んできたのかという自己理解、自分をもっと大切にしてあげたいという健康な自己愛をもつことにも役立ちます。あと普段表現しない喜びや感謝を解放する場合もありますよ。感情がないのが悩みですと、すごく無表情だった人が実は、はしゃぐとか笑うとかいうのを抑圧していてリリーシングで大笑いになっちゃったり、楽しいですよね。
なにしろ私たちはいろーんなことを心身に溜め込んで生きてきているということなんでしょう。

そうですね、なんだかセラピーの様子が目に浮かび身近に感じてきました。では、続いて「インナー・チャイルド」についてお願いします。

ベーシック・セラピー「インナーチャイルド」について

「インナー・チャイルド」は、”内なる幼子”という意味ですが、このセラピーは、外で社会的に生活している「自分」に対して、その内側の「心」はどのようなのかを見ていく作業です。
あえて現在の大人の自分と心のなかのインナー・チャイルドとを二分するわけです。膝を抱えて泣いている幼稚園くらいの子がでてきたり、夢中で遊んでいる子がでてきたりなど、こちらもそれぞれですが。
そうしてインナー・チャイルドの様子をみたり、インナー・チャイルドと対話したり、インナー・チャイルドに語ってもらったりすることで「ほんとうの気持ち」や「ほんとうは我慢していること」「もっとしたいこと」など、ほんとうの自分がわかってくるという素晴らしいセラピーです。
とくに私たちの多くは、子どもの頃から色々な要求に応えながら一生懸命に「生きてきている」わけで「ほんとうは」の部分を自分でもずいぶんないがしろにしていることが多いと思うんです。
そうしているうちに人から認められない自分のことが嫌いとか自分のことなど愛せないと思うようになることも少なくありません。

インナー・チャイルドは、ほんとうの自分に気づき、自分を愛するセラピーということなのですね。

そうですね、通常、初期に行うセラピーなので、あるがままの自分を愛する第一歩という感じになると思います。

トラウマ・セラピーについて

以上は、ベーシックなセラピーに位置づけられているということがわかりました。そこで「トラウマ・セラピー」についてですが、これはかなり特徴的といえると思うのですが、そもそもトラウマって何なのですか?

「トラウマ」とは「心的外傷」つまり心の傷のことです。一般的には、戦争体験や大災害の体験、性的暴行や虐待の被害などの経験がトラウマとして知られていることが多いですが、タイプⅡのトラウマといって生育環境での言葉の暴力など心理的虐待や生育歴からのものばかりでなく大人になってからのDV(家庭内暴力)セクハラ(性的嫌がらせ)モラハラ(倫理的嫌がらせ)などの心理的虐待や失恋や大きな失敗など劣等感になってしまったような経験などもトラウマになりえます。
そうしたトラウマ体験から不眠やフラッシュバック、過度な怯えや恐怖感、パニックなどによって日常生活を送ることが困難な場合「PTSD(Post Traumatic Syndrome Disorderの心的外傷後 症候群障害)」と診断されます。

では、リズさんは、PTSDのセラピーの専門家と考えてよいのでしょうか?

ご依頼があればPTSDに対するセラピーも行いますが、私のところへいらっしゃる方々のほとんどは日常生活を送っていらっしゃいますから「障害」があるわけではないのです。
生育歴にまつわるトラウマから生きにくさを感じているとか、現在の人間関係で過去のトラウマ関係を再現している場合、またもっと自己表現して夢や願望を叶えたい、けれどもなぜだか心がそれを引っ張る感じがするという人たちへのサポートのひとつとして必要に応じて過去のセラピーを行なっているというスタンスです。

「タイプⅡのトラウマ」つまり生育歴にまつわるトラウマというのは、誰にでもあるということになるのでしょうか?

そんなことはないと思います。たとえば同じ両親に育てられても親を反面教師として自分の人生を成功させる人もいるように過酷な子ども時代を経験してもそれがトラウマとして現在の人生に悪影響がない場合には、トラウマと呼ぶ理由はありません。

すると生育歴での傷ついた経験が現在の自分に悪影響しているかどうかがトラウマの見極めになるかと思うのですが、それは、どうやってわかるものなんですか?

まずは、本人が度々過去のネガティヴな(マイナスな)出来事を思い出してしまうというフラッシュバックに苦しんでいるとしたら、それは、トラウマと考えられます。
それから、なにか新しいことや改善のための行動をしようとするとき、人からどう思われるかが気になって踏み出せないというようなときも話をしていくうちに子ども時代変わったことをして友達から仲間はずれにされた経験や共感的に支援的に関わってくれることのなかった親との関係などが話題に上ることはよくあります。また職場などで「苦手な人」という存在についても大抵の場合、子ども時代に心理的な影響を受けていた「誰か」つまり家族やお友達など特定の過去の人物がもっていた要素を多分にもっている人で、つまりは、過去のトラウマ関係が再現されているということが多いです。
そうした「心の危機感」に関係する部分はトラウマと考えられますから、その部分にきちんと向き合いセラピーすることが有効になってくるわけです。

実際には、どのようにセラピーするのですか?

どのように、というのは?

どうやってはじめるんですか?「あなたのトラウマは、なんですか?」という感じではじめるのかなぁと思いまして。

ああ、そういうことですね、そのあたり知りたいところですよね、はい。
大切なことは、セラピーによって何がなされるかということで、それは、自分自身が感じること・認めること・受け入れることを避けてきた感情をしっかり再体験することに、まずひとつ大きな意味があります。多くの人は、その不安やり恐怖なりを感じまいとするから行動に踏み切れないという悪循環を繰り返してしまっているからです。

リズさんの提唱する「感情免疫力」それが低い理由がトラウマにあるということですね。

Yes,そのとおりです。
ですから話をしているうちにトラウマの話題になったので、そこからちょっと目を閉じていただいてという形でトラウマのセラピーをはじめる場合もありますし、ご本人が自覚していて癒したいトラウマを予めあげておいてセラピーに入る場合とがあります。
けれどもですね、初回セッションで早々トラウマ・セラピーを行うことはあまりありません。というか、あまりしないようにしています。

はぁ…それは、どうしてですか?

それは、これまで長いこと抑圧していた(無自覚に閉じ込めていた)感情体験をしていくことになるわけですから、そこでの感情にご本人が圧倒されてしまうということを避ける必要があるからです。
とくに初回セッションでは、その方の論理性・客観性の高さ低さ、つまり自身の感情体験をどれほど受け止めていけるかということがまだ見えませんでしょう? だからトラウマがあるからといって、では、はい、やりましょうっていきなりトラウマを扱えばいいかというと、そうとは限らないのです。

そうか!そのために感情解放のための「リリーシング」だとか、自分自身を受け入れる「インナー・チャイルド」だとかのベーシック・セラピーが用意されているわけですね。

その通りです。
ですから、はじめの数回は色々な訴えやお話をよく聴きながらベーシックなセラピーを行うのです。それを、たとえば毎週なり隔週なり月一なりの感覚でしていくわけですが、その一方で日常生活では、人との関わり方とか自分自身のあり方の改善など具体的な実践課題を行って、そこでの気づきややりにくさがあれば、またそこから検討し掘り下げていく感じ、このようにセラピーとの相乗効果的な経験をしていきながら自己探求・自己実現を深め広げていくわけです。

セッション・ルームと日常生活を行き来するという感じですね。

まったくその通りです。
そのようにして自分の中での感情を抱きかかえるようになりつつ、行動経験をしていくことで、さらに深い感情、つまりトラウマの解放がしやすくなる、トラウマの解放から感情を受け止める力がついてくると、またさらに日常で表現やコミュニケーションや行動がしやすくなる、つまり自己実現しやすくなるということなのです。

なるほど、トラウマ・セラピーの意義が見えてきました。

トラウマ・セラピーの流れ

ここでトラウマ・セラピー自体の流れみたいなものがあれば教えていただけますか?

ええ、もちろんです。
完結に言うならば〈再体験〉→〈感情受容〉→〈描き換え〉という流れです。
もう少し詳しく説明しましょうね。まず深呼吸から心身をリラックス状態にさせて、これは、私が言葉で誘導していくのですが、それから、そのときの様子、つまりトラウマ体験を心のなかで〈再体験〉していきます。当時は、感情に圧倒されていたはずですから「あのときの感情」をよく味わうためには、鮮やかな再体験が必要になります。そしてその感情を解放していきます。ここまでは、リリーシングと同じですよね。感じて解放するということは、そこに抑圧された感情があったということを認め受け容れることになりますから〈感情受容〉であります。
そこから今度は、〈描き換え〉といって、トラウマ経験の一部を描き換えていきます。もちろんそれは、イメージのなかでのことですが、なす術のなかった当時のトラウマ体験に対して、ほんとうは、伝えたかったことだとか単にストーリーをよりポジティヴなものに描き換えるのです。自分の意志でやり直す・描き換えるということによって悲惨な記憶は脳の中でネガティヴなものからポジティヴなものへ置き換えられ、自己イメージや他者との関係イメージなどに変化がもたらされ自分力が強くなってきます。

さらに〈描き変え〉に続いて自分の意志による言動を日常生活で、これは、多くの場合苦手な相手や特定の場面などに対してということになりますが権利を主張するとかはっきり伝えるなど力強く表現していくための〈リハーサル〉も行います。このリハーサルは、現状のどんな場面で、もっとどんな言動をしたいか・すればよいかという部分を実際声に出すなどして表現するのですが、これをすると「思い」が「身体」に伝わるので現実生活での「行動」につながりやすくなります。ここは、私が行うセラピーがセラピーだけで終わらせず、行動に結びつけるという意味では特徴的なところでもあります。

トラウマ・セラピーをしている心理セラピスト自体そう多くないと思いますが、そのなかでも実際行動と結びつけるためにセラピーに加えてこのように実際に声を出すなどして予行練習までするよう工夫しているセラピストというのは希少なのではないかと、ちょっと手前味噌ですがそう思っています。

セラピーでの主要テーマは「感情受容」

はぁ…でも、なぜそう思うのですか?

セラピーやカウンセリングはしたけど、現実は、あまり変わらないという人も少なくないからです。
その理由には、ひとつセラピスト自身の感情受容の力についても考える必要があると思います。
もちろん私が世界中のカウンセラーや心理療法士を研究しているわけではありませんが、多数いらっしゃるカウンセラーや臨床心理家でさえ、自身の感情受容の力が必ずしも高いとは言い切れないというのが私の印象だからです。ですからトラウマだとかほんとうに根源にある感情が流出してくるとセラピストのほうがその対処に戸惑ってしまいクライエントに対してそう感情的にならないようにとなだめたり説明したりしてしまい、真の感情受容・自己受容までサポートしきれないという印象があるのです。また感情解放や感情受容しても、それらの心的経験が現実生活での行動に生かされる・応用されることがなければあまり意味がないと思うからです。

そのあたりは、リズさんが自身の悩みをきっかけにとことん自己探求をしたということに関係がありそうですね。

それはあるでしょうね。当時は、ほんとにドロドロのボロボロでしたから(笑)。それでこの道に入ってしまったくらいですから!ただ、もちろんカウンセラーや臨床心理家の方々も教育臨床といってご自身がクライエントになるという実習はされていることでしょうし、またすべては、ご縁ということがありますから、ここでは、臨床家の方々をなにかこう否定しているというふうには、受け取らないでいただきたいんですけれどもね。

なにしろ私自身がセラピーを受けることがすごく好きだったんです。こんなにドロドロ、こんなにモヤモヤしたものがあったのかという感情経験を通して自分自身が”蘇り経験”をしましたし、それを通して「これこそがほんとうの自分なんです!」という自己との出逢いというか、自己覚醒を経験しました。また過去をどんなにセラピーしたり傷つけた相手を恨んだり許したりしても自分の考え方や行動が変わらないなら人生は変わらないということも私なりに経験しよくわかりました。

なるほど、これぞ根本的かつ総合的な取り組みなのですね。

そうですね、感情という縦軸と行動という横軸が、こう交わり統合されてこその変化ということになると、そう考えています。

ありがとうございます。ではまた別のコーナーでよろしくお願いします。

はい、どうもありがとうございました。

お薦め図書

「トラウマ・セラピー 幸せの法則」
「トラウマ・セラピー 愛される法則」
ともに青春出版(青春文庫)から出ています。
先に「幸せの法則」を読んでいただくとトラウマと人格形成の関係やセラピーについてより理解ができるかと思います。

(参考文献)
「トラウマの臨床心理学」
「DMS-Ⅳ」